近年、年末調整のDXは少しずつ進んできています。紙での回収や手入力に頼らず、Web上で申告・回収・計算まで完結させる企業も増えつつあります。
一方で、現場からは次のような声が聞かれることも少なくありません。
- 「年末調整は年1回の業務なのに、システム選定が負担になっている」
- 「便利にはなったが、繁忙期のトラブルが不安」
- 「給与や勤怠とすべてを一体化することに抵抗がある」
年末調整はDXが進み始めた今だからこそ、効率化とは別の観点からの見直しが求められている業務と言えます。
年末調整は“止めないこと”が強く求められる業務
- 税務手続に関わる制度上の業務である※1
- 年1回・短期間に作業が集中する
- 従業員全員が関係する
- ミスや遅延が、問い合わせや信頼低下につながりやすい
こうした特性から、年末調整は「効率化」だけでなく「業務を止めないこと」が特に重要な業務です。
システム障害・サイバー攻撃が示す「業務停止」の現実
IPA(情報処理推進機構)によると、ランサムウェアを含むサイバー攻撃は、企業の事業継続に重大な影響を与える脅威として継続的に指摘されています※2。
重要なのは、「被害に遭うかどうか」ではなく、
万一のとき、どこまで業務が影響を受けるのか
という点です。
業務システムを高度に統合・一元化している場合、一部の障害が、給与・年末調整・人事関連業務などに連鎖的に影響する可能性があります。
「すべてをまとめるDX」が常に最適解とは限らない
DXでは、データや業務を一元化する設計が採られることが多くあります。一方で、年末調整は業務特性上、分離して設計する合理性もあります。
年末調整は、給与計算や勤怠管理とは処理時期・ロジックが異なり、年1回の繁忙期業務です。そのため、年末調整だけを独立して運用するという考え方は、業務継続性の観点からも検討に値します。
「分けて考える年末調整DX」という選択肢
こうした考え方に基づき、年末調整を他業務と切り離して運用できるツールも存在します。
当社が提供する「年調ヘルパー」は、給与や勤怠とデータ統合を行わず、年末調整業務に特化した設計を採用しています。
- 既存の給与・勤怠システムはそのまま
- 年末調整だけをWeb化
- 繁忙期のリスクを局所化
すべての企業に同じ構成が最適とは限りませんが、「一気にすべてを変えないDX」を検討する企業にとって、現実的な選択肢の一つと言えるでしょう。
年末調整を「止めない設計」で見直したい方へ
年末調整を他業務と切り離して運用する考え方や、
「年調ヘルパー」の具体的な仕組みをまとめた資料をご用意しています。
「年調ヘルパー」サービス紹介Youtube動画[TOKYO MX放送ええじゃない課Biz]
年末調整DXは「進め方」が問われる段階へ
年末調整のDXは、「導入するかどうか」から「どう設計するか」を考える段階に移りつつあります。
効率化と同時に、業務継続性(止めない設計)をどう確保するか。年末調整は、そのバランスを見直すのに最適なテーマと言えるでしょう。
脚注・出典
- 国税庁「年末調整のしかた」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2025/01.htm - IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威(組織編)」
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/